・謎のブニヨド
愛知県豊田市、旧足助町の山間部の地図を眺めていたときのこと。「ブニヨド」なる地名を見つけて?????なった。…これは一体なんだ?どんな由来だ?いやそもそも日本語なのか?かなり気になり、実際に行ってみることにした(続) pic.twitter.com/BeiADwTrcc
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 12:31:47 +0000 2023
愛知県の奥三河や徳島県、秋田県等はいわゆる小字以下の細かい地名が今も住所として使われている。足助もそんな地域で、地図には「月沢」「長クゴ」「イドシリ」など生活に密着していたであろう、どこか懐かしくも不思議な名前が連綿と広がる。だがその中でも「ブニヨド」はかなり異彩を放っている。
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 12:32:43 +0000 2023
奥三河に向かったのは春の田植えの頃。山奥を縫うように小さな集落がわずかな水田を抱えて沢沿いに並んでいる姿は、どこか中国山地の鳥取や島根県の中山間地を思わせる。峠を越えるごとに東海の山々を濡らす五月雨も上がっていき、ブニヨドに着く頃には曇り空の下、田植え作業をする人々の姿があった。 pic.twitter.com/VdpQTlUifZ
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 12:35:28 +0000 2023
ブニヨドは豊田市の東方、山の合間に位置していた。もとは足助町の旧五反田村の中にあり、到着してみると実に典型的な中山間地の農村といった雰囲気で、「ブニヨド」の名は地図には出てきても、その名が書かれた道路看板などはないようだった。とりあえず住んでいる方に話を聞いてまわる。 pic.twitter.com/jKciplGiu2
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 12:38:27 +0000 2023
家の呼鈴を押すと年配の女性が出てきた。「旅の人間ですが、つかのことをお訊きします。ブニヨドって何ですか?由来はありますか?」と単刀直入に問うがやはりというのか「わからない」と返された。家の奥から更にひと世代上のお年寄りも出てきたがそれでも「わからん。ブニヨドはブニヨドや」と言う。
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 12:42:03 +0000 2023
女性によれば今このブニヨドに住んでいるのは自分たちの家だけで、周りの人に訊かれたこともないし由来なんて考えたこともなかったという。だが家の表札には「ブニヨド」の地名が書いていると言い、貴重に感じた。田舎によくいる地元の歴史に詳しいお年寄りにも頼ってみたがやはりわからないとのこと。 pic.twitter.com/K4CdHqCp0q
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 12:47:27 +0000 2023
周りの地形を改めて観察する。だが本当に沢沿いの田んぼと大きな岩があるのみでブニヨドの音になりそうな自然物はない。強いて言えば、川の「淀み」や川の流れの音から「トドロ」という地名が発生しやすいことにつながるか?と思う程度だった。こうして私のブニヨド訪問は無念に終わった…かに見えた。 pic.twitter.com/2AQ2hEDgf6
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 12:49:33 +0000 2023
これだけでは悔しい。帰宅後、とりあえず昔の史料を読み漁ることにした。明治~昭和期にまとめられた村史や地誌を探してみる。すると「ブニヨド」は漢字で書くと「部入土」になること、また昔は「ブニウド」と読んでいたことがわかった(なんでそう訛ったんだよ) pic.twitter.com/aVogzNnDfj
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 12:51:19 +0000 2023
そして、さらに読み進めるとブニヨドのすぐ裏手に「不入土」と書いて同じく「フニヨド」と読む地区があることを知り、別の地図で確認すると「ブニョウド」と読むこともわかって「これだ!」と舞い上がることになった。ブニヨドの正体は「不入土」! つまりこの地名、中世日本の荘園制度が由来だわ! pic.twitter.com/KvqeX7hvtY
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 12:54:03 +0000 2023
ここで「荘園」について説明する。めちゃくちゃざっくり言うと日本の平安期の律令制崩壊から戦国末期までの中世日本で続いた農地とその地域の支配制度のことだ。要は主に農地を含む不動産とその支配権を指し、現代風に言えば「村単位の巨大な私有地」と「その地域の支配・被支配関係」的なものである。
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 12:56:31 +0000 2023
荘園は当初朝廷やその任命官が管理したが、中央の権力が弱まわると、荘園にかかる租税を朝廷へ納めなくていい権利や、朝廷が派遣した今でいう警察兼税務調査官的な役人を荘園内へ立ち入らせない権利を得る者が現れた。これを「不輸不入権(ふゆふにゅうのけん)」と言う。
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 12:58:47 +0000 2023
不輸不入権は、その後戦国末まで長きにわたって日本の国土や土地の支配者細分化の根幹を支える制度になった。つまり「ブニヨド」は不入権を得た荘園、「不入土(ふにゅうど)」に由来すると考えられるのだよ!!!
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 13:00:53 +0000 2023
ちなみに、静岡県袋井市には「不入斗(ふにゅうと)」、福岡県那珂川市には「不入道(ふにゅうどう」という地名がある。また東海地方や関東地方には「不入斗」と書いて「いりやまず」と読む地名がいくつかある。これらも同じく不入権がある土地、「不入土」が由来と考えられているそうだ。
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 13:04:37 +0000 2023
歴博で調べてみると、ブニヨドがある足助付近は鎌倉時代末に足助庄として成立し、八条院や昭慶門院、皇室の土地であった。その影響だろうか、この地にいた足助氏は南朝方に付き、室町期に没落した。その後は足助鈴木氏が足助庄を支配し、江戸時代を迎えるころに荘園として解体されたという。
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 13:08:09 +0000 2023
500年以上も昔の土地制度に由来する名前が今も残ってるというわけなのだった。地名と方言は昔の言葉を残しやすいとよく聞くけれど、これほどその実力を実感する瞬間はそうない。驚きである。足助氏や鈴木氏が聞いたら「うわ…オレらの名残…残りすぎ」と思うかもしれないわね。
謎のブニヨド・おわり pic.twitter.com/vSsvTCQd6k
— 道民の人@ひなび・廃墟旅 COMITIA143(2/19) J11b(@North_ern2)Sun Feb 12 13:17:40 +0000 2023
@North_ern2 初めまして。面白い記事で見入ってしまいました。
道民の方とのことで、ご存知でしたら申し訳ないですが道東の標茶町にも面白い地名があります。
北海道はアイヌ語にちなんだ地名が多いので珍しくないのかもしれませんがご参考までに… pic.twitter.com/nhan2ujY0C
— mooo(@mooo82701113)Mon Feb 13 02:54:29 +0000 2023
@North_ern2 @yojizen 北八ヶ岳にニュウという場所があり、気になって見に行ったことがあります。
由来は知りません。
— domino ☆(@dominocats)Mon Feb 13 02:54:28 +0000 2023
@North_ern2 とても奥深く興味深い考察、大変恐れ入りました👏
— yammy(@cobaltuser)Mon Feb 13 03:28:28 +0000 2023
@North_ern2 素晴らしい考察で感銘を受けました。
私の地元にも地元の老人が「〇〇ゲート」と呼んでいる場所があり、町の案内板にも「〇〇げいと」と書かれていて、長年謎だったのですが、最近古地図に「〇〇ヶ谷戸」という表記を見つけ、長年の謎が解明したところです。
— 春待虚礼(@kyoreiharumachi)Mon Feb 13 03:31:49 +0000 2023
@North_ern2 @JPN_AICHI 最近回り終わったGoogleマップ検索で見つけた神社の投稿です
読み方はご期待に沿わないところもありますが
知多半島東海市名和駅付近にトドメキ交差点 とどめき橋 がありますが よくわかってないみたいな人が通行する車の人たちの話題になってます
気が向いたらどうぞ
留の字が橋にあった覚えが pic.twitter.com/T8AxlwxNne
— 佐々木直@阿久比町観光協会...観光大使1号誰になるだろう?会員番号100(@aguinosasakinao)Mon Feb 13 03:31:14 +0000 2023
@North_ern2 私の近所の石川県白山市にも部入道(ぶにゅうどう)という地名がありますが
これも同じ類なんでしょうかね?🤔
— ちり(@chiri_chili25)Mon Feb 13 03:33:25 +0000 2023
@North_ern2 小原、旭、足助は荘園開墾の土地ですからね。是非是非またお越しください。
— 伴ミキ(@moha_1035)Mon Feb 13 03:36:20 +0000 2023
@North_ern2 めっちゃ面白かった!
これを読むと歴史を大事にしたいなと思いつつ、調べるの楽しいなーと思う!!
— なべ(@callducklove)Mon Feb 13 03:41:09 +0000 2023
@North_ern2 小人が住む村です。
— フゥーチィークゥーチィーマン(FUTCH)(@Xqiz8yC302dazab)Mon Feb 13 03:38:46 +0000 2023
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